「転職」と言われてまず思い浮かぶ方法は、医師転職サイトに登録し、エージェントを利用しながら転職活動を行う方法だと思いますが、勿論それ以外にも方法はあります。
その一つが「ツテ」を利用した転職です。
退職すると決めたという話を周囲の人にすると、「実は知り合いのクリニックが医師を探してるんだけどどう?」などと求人案件を紹介してもらえる場合があります。
また、特に転職を考えていなくても、引き抜きのような形で好条件の仕事のオファーが来ることがあります。
このような形での転職に関して、いかにメリット・デメリットを上げてみました。
ツテでの転職のメリット
医療機関からの信頼がある
転職のエージェントは「誰かを紹介して契約まで至ったら紹介料をもらう」というのが仕事です。エージェント側の信用問題に発展する可能性もあるのでそんな業者はまずいないと思いますが、はっきり言ってしまえばどんな人でもいいから紹介すればよいことになります。雇用する医療機関側もその点を念頭に置いているため、少し警戒しながら見学、面接をしてくることが予想されます。
一方、個人的な紹介で転職する場合はそうではありません。誰かを医療機関に紹介する立場になったとき、誰でもいいやと手あたり次第に声をかける人はまずいないでしょう。先にも述べたのと同じ理由で、紹介した医師が様々な面で問題ばかり起こすような人物だった場合、紹介した人自身の信用問題にかかわってくるからです。そのため、紹介される医師は手技や人間性など信頼のおける人物であることがある程度保証されています。したがって、選考の際に厳しい試験などを課される可能性は非常に低いです。雇用条件や採用に関しては前向きに検討していただける可能性が高くなります。
裏を返すと、紹介してくれた人の顔に泥を塗るような行為には注意が必要です。まず、清潔感のある服装で出向く、時間を厳守するなど、社会人としての常識はきちんとわきまえておくべきです。また、いくら前向きに検討してくれるとは言っても無理な条件を提示するのは避けた方が無難です。当たり前ですが、その医療機関から採用されなくなる可能性が高まります。さらに医療機関から紹介者へその話がいき、紹介者の中での自分の評価が下がり、二度と転職の話がもらえなくなる可能性もあるからです。
エージェントに依頼するよりも、紹介先の医療機関の情報が多く手に入りやすい
そもそも、誰かを医療機関に紹介する話はどこから発生するものなのでしょう。ほとんどの場合、その医療機関の内部の人もしくはその知り合いから貰うものではないでしょうか。
その人たちが我々に案件を紹介する際には、もちろんある程度の情報を仕入れてからなります。給与や当直・オンコール等の条件面はもちろんですが、他にもエージェント伝いでは仕入れられないような内部情報が手に入る可能性があります。具体的には外来のやりやすさ(電子カルテの使いやすさ、べシュライバーの有無など)、手術室の環境に始まり、院内でのコメディカルとのコミュニケーションの取りやすさ、医師同士や看護師とのコミュニケーションの取りやすさなど、様々な情報が手に入りやすいと考えられます。
転職サイトに出ていない求人案件が多い
医師の転職サイトに掲載している医療機関は数多くありますが、転職会社も収入が必要ですので、医師の紹介を無料で行っているわけではありません。医療機関は、エージェントに情報を提示するための掲載料、掲載料が無料の場合は契約成立時の成功報酬(医師に提示する給与の20%が相場)を支払います。
このような出費はできれば避けたい、というのが医療機関の本音ですので、まずは知り合いのツテをたどって医師を探す場合も少なくありません。逆に、掲載したけど全く応募が来ない場合にも待遇をよくして紹介により医師を確保するというパターンもあります。
待遇について交渉する余地がある
先ほども述べましたが、医師転職サイトに求人を掲載する場合、掲載料や成功報酬がかかってきます。医師に支払う給与にこれらの金額が上乗せされるので、これがかからないに越したことはありません。
逆に言うと、これらの料金を医師の給与へ回せる可能性がある、ということです。もちろん、転職サイトに掲載しなかった分すべてを回してください、というのはむしが良すぎる話で、それをすんなり受け入れてくれる医療機関はないはずです。もし交渉する場合には、あくまで紹介してくれる人に迷惑が掛からない程度で、常識的な範囲内でするのが無難です。
精神的な負担になることがある
転職において気になることといえば、まずは待遇でしょう。給与に始まり勤務時間や当直の回数、学会費は自分で負担するものなのかといった細かなところまで、現在の職場と比較検討したいところです。
しかし、医療機関を紹介してもらう際、踏み込んだ条件交渉がしにくい可能性があります。特に日ごろからお世話になっている人からだった場合はなおさらです。そもそも日常会話の中ではお金の話は下品な話題として扱われることが多いです。したがって、それが交渉の場だったとしても、給与のことを自ら話題にするのは憚られるという方もいるはずです。
また、案件が自分の希望と一致しない場合に断ることも容易ではありません。友人ならまだいいのですが、上司からいただいた案件だった場合、殊更断りにくくなります。
同様の理由で、希望する勤務条件と違っていたと気づいたり、上司や他の同僚とトラブルなどが生じたりした際にも負担となる可能性があります。紹介者がいる手前、勤務条件の再交渉や退職の申し出がしにくくなるということが予想されます。
これらの負担を軽減してくれるのが仲介役として入ってくれる転職サイトです。転職の際にはこれ以外にも不安なことはたくさんありますし、一つでも減らすためにエージェントをうまく利用しましょう。
悪い情報が手に入れにくい
これは転職サイトを利用した場合にも起こりうるため一概には言えません。しかし、一般的には転職サイトは中立の立場、紹介者は医療機関側の立場です。
医療機関を紹介する際にはいいところをアピールしてぜひ入職してほしいと思うのが紹介者ですので、必然的にいい情報ばかりが集まります。一方で転職サイトを利用した場合、その医療機関との契約でなくてもどこかと契約できればいいわけです。紹介先が聞いていた条件・職場環境と違うと咎められたりした場合、次の転職の際に二度とその業者を使ってくれない可能性があります。さらにそれが口コミで広がってしまい、転職会社の評判を落とすことにもつながりかねません。転職のアフターサービスとして、転職者にその後どうかと尋ねることがほとんどですので、そこで咎められないためにもきちんと悪い条件も提示してくる可能性が高いです。
必ずしもいい案件とは限らない
医療機関はサイトに掲載する料金を省くため、もしこれで雇えたらいいな、くらいのスタンスで頼んでいることが多いです。また、紹介者の方も、契約が成立したからと言って大金が手に入るわけではなく(お礼として支払われる場合もありますが)、契約が成立しなかったからといってペナルティが発生するわけでもないので、先方は気軽に案件を振っていることも多々あります。したがって、仲のいい友人、信頼できる上司が紹介者だからといって、必ずしもいい条件で雇ってもらえるわけではありません。提示された内容に関しては自分で吟味しなければなりません。紹介だけに頼って転職するのはこういった面でもリスキーです。転職サイトを利用していれば、複数の施設の条件と照らし合わせて比較することも可能ですので、並行して転職活動をするのがおすすめです。
交渉や契約を自分一人でやらなければならない
紹介者がいる場合でも、当然交渉や契約の場に同席してくれるわけではなく、条件の提示しかしてくれません。給与や勤務時間についての交渉をすべて自分一人でやらなければならないのです。何度も転職していて交渉に自信がある、というのであれば話は別ですが、医師でそこまで転職を繰り返している人はそうそういないでしょう。大まかな条件については自分でも把握できるかもしれませんが、細かい条件は見落とす可能性があります。特に第三者がいない場合、言った言わないのトラブルになることも多々あるので、第三者に仲介してもらう方が安心です。転職エージェントであれば、その名の通り転職のプロなので、注意すべき条件や交渉できるところに関して知恵を貸してくれるはずです。
ツテを利用した転職がいつでもできるわけではありません。自分の転職と先方の雇用のタイミングが合わない限り発生しないので、もし舞い込んできたら運がよかったなと思う程度にとどめておき、他の方法も並行して転職活動をするべきだと考えます。
紹介案件のみで転職活動を勧めた場合、その案件が成立しなかったらまた振出しに戻り最初からになってしまいます。すると、また膨大な時間を要することになるので、繰り返しにはなりますが、転職サイトも利用しながら複数の方法で転職活動を勧めることがおすすめです。
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