他職種と比較してみると、実は医師は転職回数が多い傾向にあります。
転職は現在の労働環境に対する悩みを解決するための手段ではありますが、必然的に業務内容やQOLが以前から大きく変化することとなります。
では、どのようなタイミングで、どのような業務への転職をするのがベストなのでしょうか?
今回は医師の転職の傾向を掴み、医師の年次ごとにカテゴライズして、それぞれどのようなタイミングでの転職となり、どのような転職の選択肢があるのかみていきましょう。
医師の転職が多い理由は?
医師の転職が多い理由としては、複数の理由が考えられます。
1つ目は「医師には常時なんらかの求人がある」ということです。
転職を使用と思えばいつでも選択肢を準備できるというのは、転職したい医師にとっては強みになるでしょう。
2つ目は「転職を何度か重ねていても、他業種と比較するとそれが選考の際にマイナスポイントとはなりにくい」ということが挙げられます。
転職をすることは医師の業界では普通であると認知されていれば、人生の一大イベントという気持ちではなく、割と気軽に転職活動をできることでしょう。
3つ目は、「そもそも転職のチャンスが何度も訪れる」ということでしょう。
医師としての人生は、基本的に定年がないため、他業種と比較しとても長く働くことができ、その分チャンスも多く回ってくることとなります。
医師の年代別転職傾向
専攻医(3~5年目)
初期臨床研修が終了し本格的に医師として働きだすと、ほとんどの方は専門医資格の取得に向け、日常診療に加え論文執筆、学会発表等により研鑽を積み重ねていくのではないでしょうか。
新専門医制度になってからは特に、大学の医局に属して関連病院を回る方が多いことと思います。
その他には、数は少ないですが市中病院のみを回る研修パターンもあります。
また、これくらいの学年であれば、同時に大学院に入って学位の取得を目指す方も多いでしょう。
この時期に転職を考える理由としては、入ってはみたものの専攻科との相性が悪く転科したい、大学病院の医局の体制が合わないといったものが挙げられます。
しかし、将来教授になりたい、国内海外問わず留学したいと考えている場合はもちろん医局に残らなければなりません。
自分が何をしたいのかによってはある程度の我慢も必要ですので、天秤にかけてキャリアを選択しましょう。
また、転職先の選択肢の1つとして、部分の専攻を変更し、後期研修を再スタートするという方法を取る医師も少なからずいます。
この場合の転科先は同じ病院でもいいですし、違う病院の医局へ入局することも可能です。
ただ、新専門医制度では医局ごとに受け入れ人数制限が出てきたことにより、必ずしも希望する就職先が見つかるとは限らないことがあるので注意しましょう。
他には、医局を抜け市中病院への転職をすることも選択肢として挙がります。
ただし、新専門医制度の状況下では市中病院へ転職すると専門医取得の道がほぼ閉ざされてしまいます。
その点についても熟考し、結論を出すようにしましょう。
専門医取得後(5~15年目)
このくらいの学年は専門医取得も済んで、自分の科の診断や手技が出来るようになり、ひと段落した頃ではないでしょうか。
実はこの、専門医を取得した頃が一つの大きな転職のタイミングとなります。
この頃になると俯瞰的にものをみることができるようになり、業務にも少し余裕が出てくる時期とも言えます。
そのため、専攻医時代よりも自分が将来何をしたいのかを冷静に考えられるようになっているでしょう。
ここで転職を考える場合には、
・十分症例経験は積んだので、市中病院で専門性は維持しつつ年収を上げたい
・開業を考えているので、クリニックで勤務して経営についても勉強したい
・開業したら専門性よりも広い範囲をカバーする診療能力が求められるため、その診療を学びたい
などのような理由が考えられます。
転職せずに医局に残る場合、科の中でさらに細分化された専門分野で経験を積んだり、役職に就いたり留学したりとキャリアアップを図る時期です。
もしくは、この時点で大学院へ進学する方もいるかもしれません。
つまり、転職するにせよしないにせよ、将来を見据えて自分のスキルを高めることを考える年代といえます。
この年代はある程度の臨床能力を持っていて比較的体力があるため、転職市場での需要は極めて高く、その分ほかの年代よりも条件の交渉はしやすいでしょう。
ただし、注意しなければいけない点があります。
それは、あまり気軽に転職をしないということになります。
いくら多職種よりは転職回数がマイナスになりにくいとはいっても、あまりに多いと「人間性か臨床能力のどちらかに問題があるのだろう」と思われてしまう可能性があります。
「合わなかったらまたすぐに転職すればいいや」と安易に考えていると後々自分の首を絞めることになるので、転職の際は十分考えましょう。
15~25年目頃
日本医師会の過去のアンケート調査では、新規開業の場合の平均年齢は41.3歳という結果が報告されています。
また、日本政策金融公庫総合研究所が発表している「2021年度新規開業実態調査」によると、全業種を含めた開業時の平均年齢は43.7歳であり、40代で開業する割合は36.9%と最も高くなっています。
理由としては、まだ体力も気力も十分にあり、ある程度貯金もできており、銀行からの融資も通りやすい年代であることなどが考えられます。
したがってこの年代で医局に残留している場合は、開業するのか医局に残り何らかの役職を目指すのかという選択を迫られる時期といえます。
医局に残っていても重要なポストにつけそうにないだろう、今のままではやりたいことができないだろうと予想される場合には転職や開業を考える方が賢明といえるでしょう。
しかし、医局内ではかなり上の学年となるため、勤務や診療内容についてもある程度は自分の意見が通りやすくなっているはずです。
若手に当直を任せることも可能になりますし、外勤を含め給与も上昇していることでしょう。
また、関連病院にいても役職をもらうことができれば、そこからの異動は少なくなります。
医局に残るメリットは何かを考え、それが本当に自分にとってプラスになるのかをじっくりと考えましょう。
もし、この時点ですでに医局を抜け市中病院にいるのであれば、
・院内での昇進を目指す
・違う医療機関へ転職する
・開業する
あたりが選択肢となります。
経験をしっかりと積み、まだまだ転職もしやすい年代です。
勤務内容や待遇などに関する要望も比較的通りやすくなってくるため、ある程度なら待遇の交渉もしやすいでしょう。
「当直・オンコールなし」「残業少なめ」「週4日勤務」など、希望する条件を具体的に順位付けしてから転職活動を始めましょう。
25~35年目頃
この年代は、勤務医を続ける場合、大学であれば准教授や教授、市中病院であれば医長や院長クラスの役職に就くような年代です。
現在の勤務先が昇進を期待できない場合や給与が低いと感じる場であったとしても、この年次であれば、転職次第でこのような役職に就くことができるでしょうし、昇給や役職手当がつくことで年収アップも期待できます。
ただし、病院長等の役職というのは、一度就くと長期間にわたりそのポジションにいることが多いです。
また、基本的には昇進で獲得する、もしくは引き抜きとして声がかかる役職です。
そのため、ポストに空きが出ることが少なく、医師求人サイトに掲載されている数はかなり少ないです。
しかし、いわゆる「(クリニックの)雇われ院長」であれば、それより掲載数は多いでしょう。
雇われ院長のメリットとしては開業準備をほとんどすることなく院長としての診療ができ、経営ノウハウを学べることが挙げられます。
もちろん当直はなく、夜間・休日の呼び出しもありません。
また、勤務医の時より収入は高くなる傾向にありますし、それが来院患者数に左右されることがないので安定した年収をキープすることができます。
デメリットとしては医局や病院勤務の際と同じで、自分が経営者ではないのである程度は方針に従う必要が出てくることがあります。
また、「雇われ」とはいえ院長という職に就いているので管理責任が生じ、何かあった際にはその責任を負う必要が出てきます。
メリットとデメリットを比較し、自分にとってベストな就職先を見つけましょう。
開業を考えている場合、まだ何も下準備をしていないのであればなるべく早く行動に移すべきだといえます。
理由としては、
・体力が落ちてきて開業準備に奔走するのがきついと感じるようになる
・銀行に融資を申し込んでも年齢を理由に断られることがある
・開業しても、時期が遅いとその資金を回収できない可能性が出てくる
などが挙げられます。
それ以降
冒頭でも述べた通り、勤務医であれば定年がありますが、それ以外の場合には基本的には定年はありません。
自分の気力と体力が許す限り、医師として働き続けることができます。
しかし、年齢とともに仕事のスピードは遅くなりますし、1日中何件もの手術をしたり、休みもろくに取れないような外来をこなしたりといったハードワークはできなくなってくると予想されます。
その際の選択肢としては、開業医のほか、いわゆるゆったり勤務となるリハビリ病院、療養病院、介護老人保健施設や特別養護老人ホームへの転職が挙げられます。
いつまで仕事をするのか、どのような業務なら無理なくこなせるのかなどをよく考えて今後の方針を決定しましょう。
まとめ
各年代でのキャリアプランについて考察しました。
現在おかれている自分の立場と、将来何がしたいか、どんな働き方をしたいのかをよく考えることが大切です。
しかし、転職や開業については自分一人で悩んでいてもなかなか解決する問題ではありません。
もちろん、自分の周りの人に相談するのも一つの手ですが、同じ境遇の医師が多いとキャリアチェンジについてはなかなか新たな選択肢を生み出すことがむずかしいかもしれません。
そこでおすすめなのが、早い段階から医師転職サイトに登録し、エージェントに相談してみるということです。
エージェントは転職のプロですし、メリット、デメリット等も含め第三者目線で様々な相談に乗ってくれます。
その際には、一人の意見だけを聞くよりも複数のエージェントから話を聞き、そこからさらに考えていく方が思考の偏りが少なくなるでしょう。
おすすめ医師転職サイト
最後までお読みいただきありがとうございます。医師転職プラスでは、現役の医師がおすすめする医師転職サイトのご紹介や、転職に関するノウハウや最新の転職情報を発信をしています。