近年のドラマの影響もあり、フリーランス医師という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
昔は医局に属さなければ勤務医として働いていくのはなかなか厳しいものでしたが、医師の働き方が多様化してきた昨今、このフリーランスという働き方を選択する医師も増加傾向です。
どちらの働き方がより良いのか、常勤医とフリーランス医の違いについて比較していきましょう。
フリーランス医・常勤医の定義とは?
フリーランス医師とは、複数の医療機関と契約を結び非常勤医師として働くというスタイルをとる医師のことを指します。
一方で常勤医というのは「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱」によって、以下のように定められています。
「常勤医師とは、原則として病院で定めた医師の勤務時間の全てを勤務する者をいう。 ア 病院で定めた医師の勤務時間は、就業規則などで確認すること。 イ 通常の休暇、出張、外勤などがあっても、全てを勤務する医師に該当するのは当然である。 病院で定めた医師の1週間の勤務時間が、32時間未満の場合は、32時間以上勤務している医師を常勤医師とし、その他は非常勤医師として常勤換算する。」
要約すると、病院で特別に条件を定めていない限りは週32時間以上その医療機関に勤務している者、ということになります。
勤務内容の違い
フリーランス医の業務内容は、外来や内視鏡検査、検診、健診、産業医などの業務をすることが多いですが、中には手術の執刀をする医師もいます。
勤務時間はそれぞれの医療機関ごとの雇用契約によって変わるので、開始時間から終了時間、休憩時間も日によってまちまちとなります。
1つの医療機関に毎日いるわけではないので、病棟に持ち患者はいないことが多いです。
持ち患者がいない分、急変対応等で予期せぬ残業が発生する可能性もほとんどありません。
当直やオンコール、休日当番については、もちろん希望があれば契約に盛り込むことができますが、そうでない場合は必須の業務ではありません。
週何日働くか、いくつの医療機関と雇用契約を結ぶかも自分次第で調整可能です。
それに対し常勤医は、業務内容は上記のものに加えて病棟管理があります。
勤務時間は契約上の時間に加え、急変対応や手術が長引いた場合などで長時間に及ぶ可能性があり、勤務日は時間が読めないので予定が入れにくいことがあります。
勤務日数は契約により様々ですが、上記の医療法に定められている勤務時間を考慮し週4~6日勤務と設定している医療機関がほとんどです。
平日の勤務以外にも、土日祝日に出勤し病棟管理をする休日当番や、夜間急変時等に対応するオンコールを常勤医の担当としている医療機関も多く存在します。
また、それ以外にも月4回程度の当直が義務となることもあり、フリーランス医と比較すると、労働時間は長くなる傾向にあります。
給与の違い
非常勤医として診療業務にあたる場合、給与は時給や日給制をとることが多いです。
相場は大体時給1万円、日給ですと8~10万円を提示している医療機関が多いようにみえます。
医師不足の地域や交通の便が悪い医療機関での勤務をする場合、専門性の高い業務を担う場合はさらに時給が上がる可能性もあります。
単純計算すると、時給1万円×1日8時間×週5日勤務×52週間=2080万円となります。
ただしこれはあくまで1日も休みなく働いた場合の計算であり、実際は祝日や年末年始の休暇等でお休みとなる日もかなりあるので、当然これより給与は下がります。
常勤医の給与は、おおよそ800~1300万円前後となり、非常勤医と比較すると一見少なくみえます。
しかし、ここに当直やオンコールの際の手当て、残業代が加算されますし、医療機関によってはボーナス等の特別手当が付与されることもあります。
さらに、国公立病院など一部の病院以外ではアルバイトをすることが可能ですので、これに定期非常勤のアルバイトを組み込んでいる医師がほとんどです。
福利厚生の違い
常勤医であれば、医療機関との雇用契約により、社会保障はかなり充実していると言えます。
収入に直結する項目の例を挙げると、通勤手当、住宅手当、扶養手当、健康保険、厚生年金、労災保険などが当たります。
他にも、病気やけがで就労ができない時期には傷病手当金、出産の際には出産手当金が給付されます。
一つ注意しなければならないことは、上記の手当てがどの医療機関からも出されるわけではないということです。
契約時に、労働条件通知書や雇用契約書を必ず確認しましょう。
一方のフリーランス医ですが、非常勤勤務となるためこれらがありません。
年金についても、厚生年金であれば保険料の納付月数と収入額によって決まるため給与所得が高いほど受け取れる年金額が大きくなります。
しかし非常勤医師は国民年金となりますので、その恩恵は少なく、将来へ向けた貯蓄や投資が必要になります。
雇用の安定性の違い
雇用が安定しているのは間違いなく常勤医だと言えるでしょう。
どの医療機関も非常勤医師より常勤医を雇用したいという考えを持っています。
そのため、常勤医で埋まらなかった穴を非常勤医が埋めているので、新たな常勤医と雇用契約を結んだ場合、非常勤医は解雇を言い渡されることがあります。
よほどのトラブルを起こさない限り、常勤医が解雇されることはないと考えていいでしょう。
ただ、解雇する場合、労働基準法で少なくとも30日以内に解雇の予告をしなければなりませんので、明日から急に仕事がなくなるという心配はいりません。
解雇予告をされたらなるべく早く医師転職サイト等を利用して新たな求人を探しましょう。
医師転職サイトに正式に登録するためには医師免許での本人確認が必要となり、多少なりとも時間を要します。
あらかじめ登録だけでもしておけば、そのステップを飛ばすことができ、転職活動がスムーズに行えるので、おすすめです。
資格の維持、学会参加、勉強に関しての違い
資格の維持
フリーランス医師として働いていると、専門医資格の維持ができなくなってしまうケースが散見されます。
例えば麻酔科は、週3日以上を単一の医療機関で勤務していなければ専門医資格が更新できなくなってしまいます。
他の科でも場合によっては症例数が足りず、更新できなくなってしまう可能性があります。
常勤医であれば、基本的には上記のような心配は無用です。
学会参加
どちらの勤務形態をとっていたとしても、何らかの学会参加はすることと思います。
この際に常勤医ですと、医療機関によっては学会参加費や交通費、宿泊費の補助をしてくれるところがありますが、非常勤医にはこれがありません。
勉強
医療業界は日進月歩で、日々様々な情報が更新されていきます。
勤務医であれば、特に大学病院勤務であれば何もしなくても勉強会や説明会の案内が来ますし、医師の数が多いほど新たな技術や薬などの情報も入ってきやすいと言えます。
非常勤医師ですと、自ら調べてこれらの情報にアクセスする必要が出てきます。
フリーランスのメリット、デメリットまとめ
フリーランス医師のメリット・デメリットについて、常勤医と比較してまとめました。
常勤医は、手術等の技術向上、知識のアップデートなどがしやすい雇用の安定した環境であり、自己研鑽に励みたい、安定志向の医師にお勧めの勤務形態です。
フリーランス医師は、時間の調整がききやすく、就業時間のわりに給与が高い傾向にある勤務形態です。
育児や介護に時間を使いたい、医業以外に時間を使いたいといった医師にお勧めの働き方です。
自分の置かれている立場や目標などを鑑みて、今後のことを見据えてどちらにするかを選択しましょう。
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